小川未明


画像出典:『頸城文学紀行』
小林勉・著 耕文堂書店
本名小川健作
出生年1882年(明治15年)
出生地新潟県中頚城郡高城村(現、上越市)

略歴

1895年(明治28年)13歳高田中学校に入学
1897年(明治30年)15歳春日山へ移住
1905年(明治38年)23歳早稲田大学英文科卒業
1906年(明治39年)24歳山田キチと結婚
1908年(明治41年)26歳「秀歳文壇」の記者になる
1909年(明治42年)27歳記者などの勤めをやめ、文筆に専念する
1946年(昭和21年)64歳児童文学者協会設立
1953年(昭和28年)72歳文化功労者として表彰される
1961年(昭和36年)79歳脳出血で倒れ、亡くなる

代表作

 小川未明は「日本のアンデルセン」とか「日本童話文学の父」と呼ばれ広く親しまれています。 明治43年処女童話集「赤い船」を出して以後45年間、1000編に及ぶ創作童話を書き続けました。



作品紹介


赤い蝋燭と人魚


小川未明 作
1921(大正10)年

「人魚は、南の方の海にばかり棲んでいるのではありません。
北の海にも棲んでいたのであります」 (本文冒頭)
画像出典 : 
『The Mermeid's Red Candles』(赤い蝋燭と人魚)
小川未明・著  永田隆史・訳  Suzuko Makino・絵  新潟日報事業社

◇あらすじ
 北の海に住む女の人魚が人間世界に憧れて、自分の子供だけは人間世界で幸福に育ってほしいと子供を浜の神社の下に産み落とした。ろうそく屋の老婦人がその娘を拾って育てるが、金に目がくらんで香具師(やし)に売り渡すと、嵐が起こって娘を乗せた船は沈み、浜辺の神社は鬼門と呼ばれるようになりふもとの町も滅びてしまう。

◇作品について
 小川未明の代表的な童話。人間社会にあふれている打算を嫌い、醜いエゴイズムを鋭くえぐった作品です。情景兼ね備えた描写が美しく、強い迫力を持っています。幼少の頃祖母から聞いた人魚伝説(*)や、幼年時代預けられた隣家がろうそく屋だったこと、中学時代下宿した家に足の悪い中年婦人とその娘が住んでいたことなどが、作品を生み出したようです。

* 中頚城郡大潟町雁子浜に人魚伝説にまつわる「人魚塚」というのが現存します。この伝説は、「佐渡の女と越後の男が恋仲になり、男を慕った女が毎晩たらい舟で男のもとへ通ってきたのだが、厭気のさした男が潟町礒明神の常夜灯を消してしまったため、女は嵐にのまれて死に、その死体の下半身が人魚であった」という話である。(「越佐文学散歩下巻」より)
画像出典 : 人魚塚『頸城文学紀行』より


野ばら


小川未明 作
1923(大正12)年
童話

画像出典 : 『野ばら』小川未明・著 茂田井武・画 童心社
◇あらすじ
 大きな国の老兵と小さな国の青年の兵士が国境で石碑を守り、生活していました。 2人は時間がたつにつれ仲良くなっていきました。しかし、平和だった両国もある日、とうとう戦争を始めてしまいました。 小さな国の青年の兵士は、戦争に参加するため、北の方へ行ってしまいました。 老兵は青年のいないさびしい日々を送り始めます…。

◇作品について
 「野ばら」は未明の十指に入る代表作のひとつです。
 やさしい言葉でつづられていますが、その中に未明の強い思いが表れています。
 老兵と別れ、戦争に向かった青年兵士、青年兵士の帰りを待つ老兵。それぞれの気持ちが短い文の中に込められています。
 野ばらは、アニメーション映画となり、2000年に行われたスペイン国際映画祭では「20世紀に記憶されるべきアニメーション」の一つに選ばれました。  また、「推薦文化財100選」に選定されています。



赤い船


小川未明 作
1910年(明治43年)

◇あらすじ
 貧しい家に生まれた露子は、村の小学校で初めてオルガンの音を聞き、世の中にはこんなにいい音があるのかと驚きました。それからというもの、オルガンの音を聞くと、広い広い海のかなたの外国を考えていました。 その後、東京の家にあずけられた露子は、お姉様と仲よくなり、ある日海辺まで遊びに行ったとき、赤い船を見ました。 明くる日、つばめからその赤い船が太平洋を航海する様子を聞きました。



月夜と眼鏡


小川未明 作
1922年(大正11年)

◇あらすじ
 ある晩、針仕事をしていたおばあさんのところに眼鏡売りの男が来てめがねを買いました。その後、けがをした娘が来ました。おばあさんはめがねをかけて、娘の顔を見たら、それは娘ではなく、こちょうだったのです。

 この話は、国語の教科書などにも収められていました。
 「なぜ、こちょうは少女の姿になって、この家を訪れたのでしょうか。 おばあさんのやさしい心は、1匹の蝶にも一輪の花にも通ずるものだということをこの話は教えているのでしょう。」  (小川未明名作集 「解説」 より)